パエリア!

奇跡と豊饒のパエリア

1. 奇跡は南太平洋から始まった。

「奇跡の貝」で検索すると、「グリーン・リップト・マッスル(Green Lipped Mussel)」という言葉がヒットします。
グリーン・リップト・マッスルというのは、ニュージーランドのサウスアイランドの北端、マルボロー・サウンズという、海と山が入り組んだ海岸線が連なる、広大な美しい海で生産されるムール貝のことです。文字通り、貝の縁がエメラルドグリーンで彩られている美しい貝です。

マルボロー・サウンズ

「リップト(Lipped)」というのは「縁どられた」という意味だと思っていたのですが、二枚の貝が合わさると、丸い部分が唇(lip)のようにも見えることが、名前の由来であるとしている人もいます。なんか、かわいいエピソードなのでご紹介しました。

商品名としてはグリーンシェル・マッスル、もしくはニュージーランド・グリーンシェル・マッスルと呼ばれています。

Pindan Foodsのムール貝は、このグリーンリップト・マッスルです。

グリーンリップト・マッスルはなぜ、奇跡の貝と呼ばれるのでしょう。

この貝が医療関係者の間で注目され始めたのは、ニュージーランドの先住民であるマオリ族の生活の研究が発端でした。

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(Photo by (c)Tomo.Yun )

研究者たちを驚かせていたのは、70歳を超える高齢者たちが、その年齢をものともしないほど激しく動き回ることができ、時に山登りのような激しい運動さえ容易にこなし、かつ驚くべき敏捷性を備えていたこと、そして関節炎などの高齢者に多く見られる症状が見られなかったことでした。
研究の結果、その驚くべき若さの秘密が、彼らが定期的に捕食していたグリーンリップトマッスル固有の栄養素のためであろうということが判明しました。

しかし、この貝の持つ栄養素がさらに注目を集めたのは、オメガ3などの不飽和脂肪酸の必要性が注目され、摂取基準が示された2000年以降のことでしょう。日本でテレビの健康番組などでオメガ3という言葉が取り上げられるようになったのは、この2~3年のことではないでしょうか。僕自身、オメガ3などという言葉を知ったのは、ごくごく最近のことです。

オメガ3は、青魚の油に含まれるEPAやDHAなどから摂取できることは知られています。ムール貝(ニュージーランド産に限らず)に含まれるオイルにもこれらの成分は豊富に含まれていますが、さらに魚類や、ほかの種類のムール貝にすら含まれていない物質が、グリーンリップトマッスルには含まれていることが分かっています。この物質の名前は、ETA、エイコサテトラノイック酸というらしいです。す、すらりと読めますか、、、

エイコサテトラノイック酸、、、(汗)

さて、生産者や流通業者はこの貝を「ミラクルフーズ」と呼んで世界中に輸出・販売してきました。

さらに、グリーン・マッスルのオイルには、オメガ3脂肪酸以外の抗炎症活性成分の可能性を示唆する研究者もいます。(脇本敏幸「不安定な食品有効成分の機能解析」) 、、ということで、グリーンリップトマッスルのパワーの秘密はまだ完全には解明されてないないようです。

 

2. ほんとのところ栄養はどうなの?

さて、アメリカにおいては、このグリーンリップトマッスルのサプリメントが、驚くほどたくさんの会社から製造販売されています。(ググってみたのですが、日本ではグリーンリップトマッスルのサプリはワンちゃん用としてしか売られてないようですね。あさりやシジミ、カキなどの栄養価の高い貝類を日常的に豊富に食べている日本人にとって、あまりなじみのないムール貝はサプリとしても人気がないということでしょうかね?)  上に書いたようなグリーンリップトマッスルの栄養に関する情報はそのサプリメントを販売しているWebページからたくさん取得できます。(私のこの記事も途中まではグリーンリップトマッスルのサプリメントの宣伝広告みたいですが。)

そしてサプリメントの販売ページは、大体以下のような文章で結ばれています。

「グリーンリップトマッスルに含まれる優れる栄養素は残念ながら、加熱処理により失われてしまうので、その栄養素を特殊な方法により抽出したサプリメントにより摂取するしかありません、、、、」

なあんだ。調理したものはダメなんだ、、、。

果たしてそうでしょうか。

一般に、不飽和脂肪酸は、加熱処理により酸化し、揚げたり焼いたりすると飛散してしまい、減少してしまうと言われていますが、完全に失われてしまう、ということではなく、保持率の問題ですよね。青魚においては、調理方法による差異、つまり煮る、蒸すという調理法の方が、焼く、揚げるという調理法より不飽和脂肪酸の酸化や飛散の損失を少なくするのに有効であるという実験結果はたくさんあります。完全になくなってしまうのであれば、誰も青魚を推奨しませんよね。

ムール貝についての実験結果は見たことはありませんが、パエリアのトッピングとして、加熱調理の一番最後の工程で5分だけ加熱し、さらに5分余熱で調理する方法は、栄養の保持のためにはベストな方法のような気がします。(実際のデータはまったくありません。あくまでも想像です。すみません)

サプリメントを決して否定するわけではありませんが、僕は自然食品で摂取できる栄養はできるだけ自然食品で取りたい派です。(最近薄くなってきた髪の毛がよみがえるサプリメントがあれば飛びつくと思うんですけど。)

ちなみに、アメリカ版ハフポストは、「5つのミラクルフード」という記事のなかで、そのひとつとして、ムール貝(グリーンリップトシェルに限らない)を挙げています。ムール貝はオメガ3などの不飽和脂肪酸の他にも亜鉛、セレニウム、鉄などのミネラルが豊富に含まれている食品であり、一回に5つ、月に数回食することにより、その効用が得られると、この記事には書いてあります。(ちなみに残りの4つは、ピクルス、クレソン、ダークチョコレート、パンプキンシードです。)

 

3. 豊饒の海に感謝しつつ

と、まあいろいろ長々と書きましたけど、栄養よりも何よりも、美味しい、というのがこのムール貝の一番の効用だと僕は思っています。グリーンリップトマッスルはアメリカで、たくさん流通しているムール貝であり、アメリカにおけるキュイジーヌや食文化には欠かせないものとなっています。
牡蠣に匹敵するくらい大きな貝ですが、牡蠣よりも歯ごたえがあります。ガーリックバターや、ワインビネガーなどのソースにつけて食べても美味しいですが、何もつけずに、身に含まれるほのかな塩味だけでそのまま食べれば、貝そのものの美味しさと香りをはっきりと味わい、感じることができるでしょう。大きな身をまるごと口に放りこむと口の中が貝の美味しさでいっぱいになり、幸福感に包まれます。
僕が尊敬する、宮城県の牡蠣生産者でエッセイストの畠山重篤さんの感動的な著作、「森は海の恋人」には、滋味豊かな海を育むために、森がいかに大切かが語られています。グリーンシェルの産地、マールボローサウンズの地図や写真を見ると、海と山が入り組んだ複雑な地形が豊饒な海を育み、奇跡のように美味しく、世界に比類のない栄養価の高い貝を生んだことが理解できます。
僕はたまに大量にマリネにして冷蔵庫に保存して、ビールや白ワインとともに、ニュージーランドの豊饒な海に感謝しながら頂いています。グリーンリップトマッスルにはニュージーランド産のソーヴィニョン・ブランとの相性がぴったりと言われています。(僕はまだ試したことがありませんが。)

ハワイにお越しの際は、是非、Pindan Foodsのパエリアで、「奇跡の貝」の味をお試し下さい。ひょっとしたら、ニュージーランドの先住民族たちに与えた特殊なパワーを少しだけ、感じていただけるかもしれません。

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